世界的な地球温暖化による気候の変動により、この日本においても”異常気象”と言われてしまうような夏季の気温上昇、大雨による洪水や冠水などの自然災害が頻繁に起こっています。
2024年の夏は、超大型台風の上陸や線状降水帯、局地的な短時間大雨による洪水や道路の冠水などが報道をにぎわせました。
ニュースではまるで川のようになった道路を車やバイク・スクーターなどが船のように突き進んでいる映像、川が決壊して住宅街に流れ込み、家の前が池のような状態になっているショッキングな映像をご覧になったかと思います。
さて、上記のような洪水や冠水などで水没しそうな恐れがある場合、どのように対処すべきでしょうか?
例えば、原付バイクに乗っていて”ゲリラ豪雨”に遭ってしまい、気づけば目の前の道路が池のように冠水してしまっています。
そんな池のような道路を突き進む車から判断すると、深さは約30cmほど…。
もし自分の原付が同じように進んだとしたら、マフラーが水に浸かってしまうほどの高さでしょうか…。
このような場合は、普通に突き進むとマフラーが水没してしまいエンジンが止まってしまう可能性が高いと思われます。
また、もしマフラーが水没してしまった状態でエンジンを掛けようとしてもエンジンはかかりません。
同様に、エアクリーナーボックスやクランクケースカバーまでも水没してしまうと最悪の場合はエンジンの内部まで水が入ってしまいエンストを起こすこととなるでしょう。
ですので、目の前の道路が冠水して川のようになっていた場合はそのまま突き進むような無謀な行動は控え、近隣の高台や立体駐車場などがあればやむを得ず避難させてもらうなど身の安全とバイクのことを考えた行動を取るようにする必要があると言えるのではないでしょうか。
では、河川の氾濫などにより家の前が池のような状態になってしまい、マンションの地下駐輪場に止めておいた原付バイクがシート付近まで水没してしまった…。
このような場合はどうしたら良いでしょうか?
原付スクーターがシート付近まで水没した場合は、エンジンからマフラー、駆動系、電装系などバイクの主要部分が水に浸かってしまっているため、最悪の場合は全損となってしまう可能性も否定できません。
もちろん水没した時間が短ければ短いほどそのダメージは少なく復活する見込みがあると言えるでしょうが、コンピューター制御となっている最近のバイクの場合は電子機器が正常に作動しない可能性が高いと言わざるを得ません。
しかしながら、ご自身が所有しているバイクがもしこのような水没状態となってしまっている場合、早急にそのバイクを安全に水から退避できる場合を除き、残念ながら水が引くのを待つしか方法は無いと言えます。
水が引いた後にすべきことは、まずバイクを購入した販売店や近隣のバイクショップ、メーカーの販売代理店に問い合わせて、適切な処置を施す必要があるでしょう。
絶対に避けたいのが、試しにエンジンをかけてみることです。
上記にも記しましたが、エンジン内部まで水が入り込んでいる可能性もあるのでエンジンをかけることによる内部が破損してしまうなど深刻なダメージを負ってしまう可能性があることを理解しなければなりません。
また、水滴によって伝送系のショートを引き起こし、発火事故に発展する場合もありますので、絶対にエンジンをかけるようなことをせず早急に修理を依頼することがベターなのではないでしょうか。
では、実際にシート付近まで水没してしまった原付スクーターは修理することができるのでしょうか?
エンジンからマフラー、駆動系、電装系などバイクの主要部分が水に浸かってしまっているバイクについては、広範囲にダメージを負っている可能性が高いため修理できるかどうかの判断は車種や状態によっても変わってくるようです。
例えばキャブレターを使用している旧型の車種などであればオーバーホールなどを行うことによって修復が出来る可能性も高いですが、コンピューター制御のインジェクション仕様の車両の場合はコンピューター自体の交換が必要となる場合があるなど修理代金も余計にかかってきます。
また、その他の交換パーツやオイル、作業工賃なども含めると、程度の良い中古車両が買えてしまうぐらいの金額となってしまう場合も想定しなければならないでしょう。
なお、水没したバイクについては修理をお断りをしているバイクショップもあるとのことですので、バイクを持ち込む前に事前に確認が必要です。
バイクショップとしても、水没したバイクは修理後にトラブルが発生するリスクが高いようで、その故障に対する『補償』がネックとなってお断りをしている場合が多いようですね。
やはり、このような完全に水没してしまったバイクについては、修理することを諦めて廃車とするしかない場合が多いようです。
もちろん、完全に水没していない状態で短時間マフラーが水没する程度であれば、修理できる場合が多いとのことですから、川のようになってる道路やアンダーパスには突き進むような無謀な行動は絶対に控えるようにし、バイクとともに高い場所へ速やかに移動して水が引くのを待つことが最良の策ではないでしょうか。
なお、『水災補償』が可能な”バイク保険”などもありますので、加入条件を調べて条件があうようであれば加入してしまうと安心かもしれません。
「水災によって全損となった場合には購入金額と同額の保険料をお支払いします」という内容の保険もあるようですから、新車や稀少車種など高額なバイクを所持している場合は”安心を買う”という意味でも『水災補償』が付いた保険の加入をお薦めします。
この異常気象とも思える局地的な集中豪雨は、地球温暖化によるもの考えると一時的な現象ではなく、もはや”日常的な天気”と考えるべきであり、私たちの考え方そのものを変える必要があるのではないでしょうか。
では、もし愛車が水没して修理も出来ない場合、”廃車(処分)”をするにはどのようにしたらいいでしょうか…?
実はこの水没バイク、引取り先を見つけることは現状においてかなり困難な状況と言わざるを得ない状況です。
処分するにあたり、例えば買取店における水没車の買い取りは、よほどの人気車でない限り買い取り不可などの厳しい回答となります。
これは、既に記載した”修理”と同じ考え方で、水没車を再販した後にトラブルが発生した場合は販売店が『補償』を行うこととなるため、『扱いたくない』というのが本音ではないでしょうか。
また、我々のような無料で不要な二輪車を回収させていただいている業者においても、水没車については状況によって引取りをお断りをさせていただく場合もあります。
当社を含め、二輪車の無料回収を行っている業者については、依頼者様より引き取らせていただいた”バイク”を業者間販売や海外へ輸出するなどして利益を上げるビジネスモデルとなっているため、修理にコストがかかるだけでなく再販にてクレームが発生する恐れのある水没車を扱いたがらないのがその理由です。
”水没車”が業者から嫌われてしまう理由を記載させていただきましたが、では”水没車”を処分するにはどうしたらいいのでしょうか?
一例をあげますと、以前こちらのコラムでもご紹介させていただいた、国内の二輪メーカーや販売店が協力して取り組んでいる『二輪車リサイクルシステム』を利用して処分する方法があります。
「二輪車リサイクルシステム」って本当に無料??
こちらは二輪車メーカー主導で行っている『リサイクルシステム』ですので、”指定引取窓口”に持ち込まれた二輪車は「処理・リサイクル施設」に送られて適正に処理・再資源化が図られることになります。
もちろん”二輪車リサイクルシステムの対象車両”であるかどうかの確認があり、システムに参加していないメーカーの二輪車だったり、著しい改造車などは引き受けられないケースもあるとのこと。
もしこちらの「二輪車リサイクルシステム」で引取り処理ができない場合は、最悪ご自身で廃車処理施設を探して自ら持ち込みを行い、費用を払って廃棄を行わなければならない可能性もあると認識していただく必要があるかもしれません。
水没してしまったバイクというのは、実は処分するにも簡単ではないということをご理解いただけたでしょうか…?
まず大事なことは、愛車のバイクを絶対に”水没させない”ということです。
目の前の道路が池のように冠水していたら迂回したり高台に逃げる、また、近隣の川が氾濫しそうな状況であれば、できる限り高い場所に避難させるなどの対策を講じて絶対に”水没させない”行動を取るように心掛けていただければと思います。